奇跡はおきない〜高良結香Broadway Night in Okinawa2010

ryujinoda

2010年09月24日 14:14

 「奇跡はおきない」。
 何年か前にタテタカコさんが「情熱大陸」で紹介されたとき、彼女のノートの片隅にそんな言葉が書かれていた。以来、奇跡をなるべく信じないようになった。
 多くの人がミラクルとか奇跡という言葉をよく口にするが、そうしたものは日々の積み重ねが呼び込む当然の結果なんだと思う。昨夜「Yuka Takara Broadway Night in OKINAWA 2010」の公演を見終えたとき、そんなことを改めて感じた。

 大きな目標や夢があって、それを現実のものにしていく作業は非常に骨が折れることだ。高良結香との仕事の中で感じるのは、彼女が目標やイメージを現実のものに落とし込んでいくことに長けているということ。
 ブロードウェイのアクターを沖縄に呼んでコンサートを行う。言葉にすると簡単だが、それを現実にするにはいくつものハードルがある。ざっと、オン・ステージのことだけ考えても、これだけのことがある。
1)ブロードウェイのキャストにアメリカから遠い沖縄まで、ボランティアで大切なショーを休んで来てもらう。
2)沖縄のバンドのメンバーに難度の高い曲を、初見に近い形で演奏してもらう。
3)沖縄の後輩ダンサーを育てて振り付けを教える。
4)ダンス、ボーカルのワークショップの生徒たちを育成する。
 こうしたことを、アメリカからの遠隔操作でやっていく。引き受けてくれるバンドやダンサーにとっても、非常に高いハードルだ。こうした一つひとつの作業をジグソーパズルのピースを並べていくように積み重ねていく。そこにミラクルの入り込む余地はない。

 そういうことをふまえて、昨日の公演をみて感じたこと。

 今年はよりミュージカルの要素の強い選曲になっていて、歌だけでなくアクティングの要素もふんだんに詰まっていた。ブロードウェイで活躍するかれらの歌は、素晴らしいというのは当たり前で、改めていつまでも聴きたいという気持ちにさせてくれた。みんなスゴイ。

 昨年も感じたことだが、バンドはとても充実していた。メンバーそれぞれが、ちゃんと歌を聴きながら、歌い手とコミュニケーションがとれている様子がみてとれた。このコンサートを、沖縄のミュージシャンのバンドでやれているということは、実にhonorなことです。

 ダンサーズ、昨年よりも表現力が増していた。バレエという基礎を身につけた彼女たちは、どんなダンスでも見事に踊り倒す。アクティングということがすごく意識されていて、実に見事だった。この1年でどれだけの努力を重ねてその表現を得ることができたのか、結構、感動した。2年以上、ワークショップを続けて来て、琉大ミュージカル出身の、パブロ&シローがダンサーズに加わったことは素直に嬉しかった。ダンスだけでなく、ボーカルやアクティングにも積極的な2人はものすごい可能性を秘めていると思う。なるべく早く、ニューヨークに行った方がいい。

 ワークショップ参加者たち。東京と沖縄から30人近いメンバーが集まってくれた。そのエネルギーは客席にも確かに伝わった。ブロードウェイのメンバーと、ワークショップのメンバーが同じ舞台に立って共演するというのは、一番のテーマだと言ってもいい。単にアメリカからうまいアクター/シンガーを連れて来てショーをやるだけではダメなのだ。いかにブロードウェイの舞台を身近に感じてもらうか、そしてそれぞれの目標や夢をリアルに引き寄せてもらえるような機会を提供できるかというのは、制作側のテーマでもある。こういう形はこれからもうまく継続していきたいと思う。

 ショーは、今夜もあります。見て損はないです。当日券も若干出るようなので、時間がある方は是非、浦添市のてだこホールにお越し下さい。決してミラクルではない、メンバー、スタッフみんなが積み上げてきた素晴らしい時間を共有できると思います。

■Yuka Takara Broadway Night in OKINAWA 2010
ライブ情報はコチラ→http://yukatakara.ti-da.net/e2835689.html#more
ps
…なんてことをいいながら、昨日作った年末の某公演(近日発表)のチラシには「一夜限りの奇跡のコンサートがオキナワで実現」なんて、書いちゃってた…。
関連記事